はじめに
キャリアコンサルタントの国家資格更新にあたり、実技と講義を受講しました。
その中で印象的だったのが、育児や介護と仕事の両立を支援するキャリアカウンセリングのロールプレイ。
まさに現代的なテーマであり、今の日本社会が抱える課題に直結している内容でした。
私はふと「この支援内容、生成AIならどこまでできるのだろう?」という興味が湧き、実験的にAIとの比較をしてみることにしました。
生成AIとの“実験的対話”
私は普段、ChatGPTなどの生成AIを日常的に使っています。
今回の実技講義で取り組んだロールプレイと同様の相談内容をAIに入力し、どんなアウトプットが返ってくるのか試してみました。
その結果…
私自身が実施したキャリアカウンセリングと、かなり似通った支援内容がAIから提示されたのです。
- 育児や介護と仕事の両立に関する国の制度の紹介
- 就業先上司/人事や第三者支援先との連携の重要性
- 相談者、配偶者のキャリアや人生観、価値観についての内省、言語化、対話の重要性
こうしたポイントが、非常にロジカルかつ丁寧にAIから返ってきたのです。
正直、「ここまでできるのか…!」と驚きを隠せませんでした。
それでもAIにはできなかったこと
一方で、私の中で強く残った感覚があります。
それは、「AIができる支援」と「人が行う支援」は似て非なるものだということ。
AIは、情報や提案を的確に返すことはできます。
しかし、**“人間らしさ”**の部分は、まだまだ担えません。
- 相談者の表情や沈黙から、言葉にできない不安を汲み取ること
- 「本当はどうしたいのか?」という価値観の深掘り
- 言葉にできない(ならない)想いや言葉の裏にある感情に触れ、受け止めること
つまり、キャリアカウンセリングの本質である「対話を通じて自分を見つめ、内省し、自分らしさを追求するプロセス」は、人ならではの支援なのだと感じました。
これからのキャリアカウンセリング:AIとの役割分担
今回の経験から私が強く感じたのは、
これからのキャリア支援は「人かAIか」ではなく、「人とAIの協働」であるべき、ということです。
以下のような役割分担が考えられるのではないでしょうか
AIが得意なこと | 人間が担うべきこと |
---|---|
情報整理や業界分析 | 感情への共感、価値観の探究 |
適職診断の提示 | 自己理解の深掘りと意味づけ |
論理的な助言 | 迷い・葛藤への伴走と承認 |
この役割分担が、これからのキャリアカウンセリングの理想的な形だと感じています。
これからのキャリアカウンセラーに求められる力
では、このAI共存時代において、キャリアカウンセラーにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?
従来のスキルに加えて、以下のような視点がより重要になっていくと考えます。
1. 問いを引き出す力
対話を通じてその人の問いを一緒に探す姿勢。
2. 自己物語の再構築力
過去の経験の断片を、意味あるストーリーとして編み直す力。
「これまでの私があるからこそ、これからの私をどう描くか」につなげます。
3. AIとの協働設計力
AIによる自己分析→人との対話→再評価…といった、
支援プロセス全体の設計と判断力も重要になってくると思います。
おわりに
生成AIの進化は、キャリア支援のあり方そのものを大きく変えつつあります。
しかしその中でも、人間が人間に向き合うことの意味は、決して失われないと感じます。
- 傾聴する力
- 共に問いを見つける力
- その人の物語に敬意を払う姿勢
これらがあってこそ、キャリアカウンセリングは単なる「情報提供」ではなく、
「その人が、その人らしい人生を生きるための支援」になるのではないかと感じます。
これからも、AIとともに進化しながら、人としての支援の本質を大切にしていきたいと思います。

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